京都国際マンガミュージアム(中京区)で6月24日、日本マンガ学会主催のシンポジウム「デジタル時代のマンガ」が行われた。
午後に行われた「編集・流通の視点から」編には、ウェブマガジン「トーチ」編集長の関谷武裕さん、weibo comicの副編集長の安陽さん、日本大学非常勤講師の玉川博章さんが登壇した。司会は漫画家の田中圭一さんが務めた。
田中さんは2017年に刊行した著書「うつヌケ」の連載に当たり、担当編集者をツイッターで募り、noteと文芸カドカワの「二刀流」で発表した経緯を紹介。「100円の第一話は2000人に売れ、単行本にしなくても黒字化できた。電子書籍の毎月の更新が、単行本の宣伝にもなっていた」と分析する。
リイド社のウェブマガジン「トーチ」編集長の関谷さんは「トーチは、辺境の村に訪ねてもらうことをコンセプトにしている。先行媒体が多く、まだ見ぬ表現や作品の選び方を模索した。電子書籍の売り上げも上がっているが、マネタイズは単行本でしている」と話す。
weibo comicsの安さんは日本と中国の電子書籍の違いを紹介したほか、玉川さんが電子書籍と紙の漫画を「物質性」に着目して比較し、価格や流通に関する考察を披露した。
田中さんはこの日、来場者からの「紙の漫画はどうなるか」との問いかけに対し、漫画家・カメントツさんの著作「こぐまのケーキ屋さん」を例に挙げ、「(電源を入れたりアプリを立ち上げたりしなくても)好きなキャラクターに『会える』。ぬいぐるみやキーホルダーといったコレクターズアイテムの一つとして紙の本は生き残るのでは」と答えた。安さんは「中国では作家にファンが付く。(紙の漫画は)作家の関連グッズとして生き残っている」と話す。
会場では日本語教育と漫画、擬音をテーマにした研究などのポスター発表も行われた。