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西本願寺の執行長に安永雄彦さん 築地本願寺の改革、京都でも

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 西本願寺(浄土真宗本願寺派本山)で10月12日、安永雄彦さんが執行長就任の会見を行った。執行長とは同寺の「内局」と呼ばれる経営部門のトップを指す役職。株式会社であれば社長に相当する。

元銀行マンがお寺の経営トップに

 会見場にはおよそ20社のメディアが集まった。約1万ある西本願寺派を束ねる本山とはいえ、一寺院の人事にこれだけの注目を集めるその理由、それは安永さんの異色の経歴にある。

 安永さんは寺の生まれではなく、銀行員から経営コンサルティング会社に務め、50歳で得度した。それだけではない。築地本願寺(東京都中央区)でこれまでにない寺院運営を押し進めた人物なのだ。

 安永さんは2015(平成27)年、「開け築地本願寺」を旗印に掲げて宗務長に就任。当時いわれていた「終活」や「エンディング」に関する窓口や結婚相談所を開設したほか、築地の場外市場から仕入れたメニューを提供するカフェを開くなど新たな試みを立て続けに行った。

 こうした取り組みを経て、年間参拝者数はコロナ前には5年で倍増。コロナ禍でも若手職員がオンラインを活用した法話会や法要などを、撮影から編集・配信まで全てを行ったことでも注目を集めた。

お寺でも「回せPDCA!」 

 安永さんが見据えるのは未来。「お参りに来る方がこのまま高齢化して、門信徒さんのネットワークを広げられなかったら衰退するだけ。20年後にも同じように支えていただけるお寺、今までのような信者さんだけでなく『いいよね』と思ってもらう層がすごく大事」だと話す。

 まず変えていくのはスピード感だという。「東京に比べて寺も京都の街全体のスピードもゆっくりで、それがいい面もあるがスピード感が必要。これは今後の私の課題」と話す。意志決定を早めるために何か依頼をしたら「考えた?」「(○○までに)決めてください」という声がけ」から始めていきたいという。

 イベントを開くにしても、寺院の関係者が誰なのかを明確化し、「たくさん人が来て良かった→終わり」ではなく、どんな人が来たのか、名前と住所は最低限。感想をもらってフィードバックを分析し、何が良かったよかったのか、何をもっとやってほしかったのか。ウェブやクラウドも活用して、「日常の仕事の中でPDCAの思考で問題解決ができるようにしたい」と話す。

 実はこの会見も改革の一つ。こうした会見はこれまで行われてこず、寺の行う会見は宗教記者クラブしか参加することができなかった。開かれた寺を目指そうという安永さんの考えが反映された形だ。

「歴史に残る」仕事を

 銀行員時代、大阪で勤務していたことから京都にはよく遊びにきていたという安永さん。「異文化の土地に来たという感じはない」と笑顔を見せる。「寺の長い歴史の中では、歴史に残れるかなという気持ちでわくわくしている。しっかりと職責を果たしていきたい」と意気込みと野心ものぞかせる。

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