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京都の老舗「立体ギャラリー射手座」で最後の個展-祈りと救済の菊千本

吉田重信さんの作品「臨在の海」
(photo © Takashi Suzuki)

吉田重信さんの作品「臨在の海」 (photo © Takashi Suzuki)

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 京都で42年の歴史を持つ老舗ギャラリー「立体ギャラリー射手(いて)座」(京都市三条小橋東入る、TEL 075-211-7526)で5月10日、最後の個展となる美術作家・吉田重信さんの「臨在の海」が始まった。

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 福島県いわき市在住の吉田さん。昨年からギャラリーの最後の展示として「浄化」「献花」といったテーマで菊の花でギャラリーを埋め尽くすことを決めていた。準備を進める中、震災に見舞われる。津波の被害は免れたものの福島原発の影響を考え一時避難をしていた。その時に同ギャラリーの渡邉ひさのさんと津波について話をする中で、作品のタイトルを「臨在の海」に決めた。「『臨在』という言葉は他にも意味があるが『その場所や風景と向かい合う』という思いが強い」と吉田さん。

 ギャラリーへ続く階段を下りると、戸のガラス越しに闇を照らす赤い光と菊の花がギャラリーを埋め尽くす光景が現れる。足元にはいわき市の海岸の砂を敷き、ペットボトルに菊を一本一本差した。戸を開けることはできるが、あえて誰も立ち入れないようにした。

 ギャラリー内は「最後を迎えるギャラリーを清める」菊の香りが充満している。「震災では多くの人が津波にさらわれ、いまだに行方不明の人も多い。菊はそうした救われない魂の一つひとつであり、祈りでもある。その両方が地上に向かう…そんなイメージ。時間がたつにつれて開花が進み圧倒的な菊の存在感が出てくる。そうした変化も見てもらえたら」とも。

 開館時間は13時~20時(日曜は17時まで)。月曜定休。今月22日まで。

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