![(右から)十五代樂吉左衞門さん(陶芸家)佐藤オオキさん(デザインオフィスnendo代表)、松井優征さん(漫画家)](https://images.keizai.biz/karasuma_keizai/headline/1566784530_photo.jpg)
ロームシアター京都(京都市東山区)で8月24日、「超・異次元鼎談(ていだん)」が行われた。
来月から京都市内で世界各国の博物館関係者が集まって行われる国際会議「ICOM(国際博物館会議)」の開催を記念して行われた同イベント。ゲストには陶芸家の樂直入さん、デザインオフィス「nendo(ネンド)」代表の佐藤オオキさん、漫画家の松井優征さんが招かれ、佐藤さんの著作「佐藤オオキの没ボツ案」にちなみ没にまつわる話から始まった。
漫画家の松井さんは代表作「暗殺教室」の前に描いた「ネーム」(漫画の設計図)を公開。「没は漫画家の人生をむちゃくちゃにするからこの世にあってはならない」と会場の笑いを誘いつつも、没になった作品の主人公の「渚」が、暗殺教室でほとんど変えずに使うことができたポイントを紹介した。
樂さんは、作品が気にくわなくて足で蹴ったところ、靴下の跡がついたことで作品が完成したり、手本にしていた碗(わん)を猫が割り、奥さんが継いだとこで、さらによくなったりしたという茶わんの写真を示しつつ、「意識的に作るのは我慢できない。偶然と意識が絡み合う、意識を超えたものを作りたい」と熱く語った。
佐藤さんは、傘メーカーから「盗まれない傘」を依頼されたが、デザインがシェアの仕組みに発展し、現在は鉄道会社など別のクライアントと実装化へ進めている例や、番組の企画でマツコ・デラックスさんのためにカルピスを飲むためのグラスをデザインしたものの、マツコさんはグラスで飲まないと分かり「企画の段階で没だった」という事例などを明かした。
樂さんが「常識や当たり前だと思っている意識を壊すことが本質」と話すと、佐藤さんが「常識は、疑ったりやわらかいまなざしで否定したり、もんでほぐすようなことを意識している」と話したほか、松井さんは、ミケランジェロがダビデ像の鼻の高さを変えるふりをしたという逸話を例に、共同制作者である編集者の顔を立てつつ、やりたいことは曲げないようにしていることを明かすと、佐藤さんは「クライアントのために2パターンを何とか用意したい」とデザイナー魂を見せ、樂さんは「クライアントは基本的にいない」と話し、三者三様の制作背景が垣間見えた。
最後に感想を求められた佐藤さんは「樂さんとは、制作において違う部分が多かったが、次の機会があるなら1パーセントの同じ部分も探ってみたい」と振り返っていた。