京都商工会議所(京都市中京区)で3月9日、京都デニム(京都市下京区)が試作を手掛けた「電圧組紐(くみひも)」の刺しゅうを施したチュニックとデニムの発表がされた。
圧電組紐は、関西大学システム理工学部の田寶佳郎さんと帝人フロンティア(大阪市北区)が共同開発した繊維。導電繊維の芯に、曲げると電気エネルギーを発生する圧電繊維を、組みひもと同様に組んだ「鞘(さや)」に、シールドとなる繊維で包む構造を持つ。繊維を引っ張ったりたたいたりして生じる曲がりを電圧に変換する。
田寶さんはさらに、どの方向からどういった力が働いたのか特定する方法を模索。映画「君の名は」で切られたスカートにかわいい刺しゅうするシーンから、生地に対して折り返したり、方向を変えたりできる刺しゅうを施すことを思いついた。田寶さんは「映画を見たときに『これだ』と思った」と当時を振り返る。
刺しゅうの形は、「引っ張り」「ねじり」「ずり」といった動きに大きく反応するものをコンピューター上のシミュレーションで割り出した。異なる動きを検知する複数の刺しゅうをすることで、どういった動きがどのくらいの強さで行われたかが分かる。
刺しゅうをしたファッションの試作は、京都デニムの中原優花さんに制作を依頼した。その理由を田寶さんは「iphoneのように、技術には使いやすさが求められることや、ヒットを生む情報発信の中心が若い女性にあることから女性の視点が欠かせないから」と話す。
完成したチュニックとデニムは、肩・脇・ひざなど動きの出やすい12カ所に圧電組紐の刺しゅうを施し、wifiで電気信号を送る。今後はペットの動きが見られるウェアや高齢者の見守りといった分野の応用を進めるという。
中でも期待が高いのがビッグデータ分野だ。田寶さんは「画像データを取らないので、ビッグデータ収集の壁となる個人情報の問題が少なく、スマホを使うので特別なことも要らず、洗濯もアイロンにも耐える。日常そのもののデータを取得できることから質の高さも期待できる。ビッグデータで後れを取っている日本の巻き返しにつなげられたら」と話す。