京都国際マンガミュージアム(京都市中京区烏丸通御池上る)で4月15日、アメコミ「兎用心棒」作者のスタン・サカイさんのトークとVRの体験会、ライブペインティングイベントが行われた。
「兎用心棒」は京都生まれ、ハワイ育ちのスタン・サカイさんが手掛ける作品。1984(昭和59)年から30年、200巻を超えるシリーズで、世界14カ国語で翻訳されている。
京都文化博物館の映像・情報室長の森脇清隆さんと行われたトークセッションでは、「南総里見八犬伝」「七人の侍」など多くの時代劇映画とアメコミを読んで育ったサカイさん。「三船敏郎の『宮本武蔵』はフルカラーで美しく、抑えた演技に感動した。スケッチブックに描いた耳をくくったウサギはユニークで、これを使おうと決めた」と主人公「宮本兎」の誕生を語った。
作中ではしょうゆ造りやたこ揚げ祭りなどが取り上げられ、さらに巻末には日本文化の詳しい解説や参考文献を巻末に収録する。「『草薙の剣』はリサーチに5年掛けたので、その時の話を載せたら好評だった」とサカイさん。今回の来日もキリシタンについてのリサーチのためだと明かした。
話はサカイさんの制作スタイルについても及んだ。アメコミは通常、原作と作画、ペン入れ、セリフや描き文字、彩色といった分業制が主流だが、サカイさんはすべての工程を1人でこなすという。「出版社とは描いたものをそのまま掲載するという契約で、編集者が作品を見るのは全て出来上がってから。SNSなどでファンから受けた要望に応じることもある」と話す。
イベントでは制作会社「x10studio」(下京区)が制作したVRコンテンツの体験会も行われた。現在は見られない天守閣を備えた江戸時代の二条城をキャラクターが紹介する「二条城編」、「猫忍者」と忍者修行するゲーム「忍者道場編」の2種類のコンテンツを制作。サカイさんは「当初VRでどうなるか予想も付かなかったが、エキサイティングな世界観で、みんな思わず身を乗り出すほど実際に兎用心棒の世界に入り込んでいる」と紹介した。
トークの後はサカイさんが、ヘッドセットを付けてVR空間にキャラクターを描くライブペインティングが行われた。2回目でまだ慣れないと話しながらも、次々とキャラクターを描き出したり、炎のエフェクトを飛ばしたりして、楽しみながらペンを走らせていた。
最後にサイン会やVRコンテンツの体験会が行われ、集まったファンはサカイさんとの交流やVRを通じて兎用心棒の世界を楽しんだ。
VR体験会は5月7日までの土曜・日曜・祝日に行われる。開催時間は10時30分~17時。料金は無料だが、入館料が必要。