京都商工会議所(京都市中京区烏丸通夷川上る、TEL 075-212-6446)で2月26日、妙心寺退蔵院副住職の松山大耕さんの講演「禅に学ぶ物事の伝え方 大事なことは言葉では伝わらない」が行われた。
インドから中国に渡り、日本に伝わった「禅」。松山さんは、「禅は、釈迦の行動を追体験することで、悟りの境地を得ることを求める宗派で、実践と体験を重んじる。「禅」の文字や石庭、一汁一菜の食事、座禅に代表されるように、単=シンプルを示すもの」と話す。
松山さんは出家修行時代、埼玉県の平林寺で、朝は3時から起きて座禅やまき割り、掃除や托鉢(たくはつ)などを行った。外界からの情報は一切遮断し、俗世間から離れた日々を送ったという。
道元禅師により日本にもたらされた精進料理の調理も修行の一つ。手間のかかる作業を惜しまず、「心をいただく」料理で、食べる人がたくあんとお茶で皿を清めるのも「仏教の実践=精進」と説く。
「禅問答」も禅の教えを会得するための修行の一つ。禅問答には唯一無二の答えがあるといい、その答えは本来、自分で見つけるもので口外しないものだが、例として会場に1つ問いを投げた。
この問いに対する答えは「論理的に不可能なことだとしても実際にやること」。「知識として知っていたとしてもやったことはあるのか『知っているつもり』になっていないか」と松山さん。「やめておけ」「やっても意味がない」という態度をいさめ、知識や経験がかえって弊害になることを気づかせる問いだという。
松山さんは最後に「自ら実践することで伝わるものがあること、わざと答えを教えずに『気づかせる』ことも大事」と言葉だけではない伝え方についてエピソードを交えて紹介。参加者に経営者が多いことを踏まえ、上手に事業を継承している人の特徴や、論理よりも人の心を動かす「瞬時に動く」ことの大切さや、論理的な場面でなくてもすぐに動ける、禅で言う「働き」を大切にする考え方にも触れ、物事の伝え方や人の見方に生かしてほしいと呼び掛けた。