京都国際マンガミュージアム(京都市中京区烏丸通御池上る、TEL 075-254-7414)で現在、「漫画展」テーマにした企画展示「誰のためのマンガ展?」が行われている。主催は同館と京都精華大学国際マンガ研究センター、マンガミュージアム研究会。
「学習漫画」「風刺漫画」などの漫画が生まれた背景や役割を知る「正しく読む」ことに、漫画に町おこしや外国人といった視点を組み合わせた実験的取り組みという同展。
同館学芸員の伊藤遊さんによると、同展を企画した背景には百貨店などで近年開催されるようになった「漫画展」の増加があるという。「その多くが、ファンが好きな作品や作家を『確認』するための場所で『オフ会』の延長にあるもの」と指摘する。「漫画展自体を否定するものではないが、漫画ファン以外の人が漫画を知ったり楽しんだりできる内容を展開したい」と伊藤さん。
「町おこし」を意識した一角には、美少女キャラクターが使われたご当地商品を並べる。伊藤さんによると、地域のPRに「萌え美少女キャラクター」を採用する手法は近年珍しくないが、同時に行政発のキャラクターが「ふさわしくない」と批判されることも話題に上がることもあるが、近年は下火の傾向にあるという。
「こうした批判は『ご当地のキャラクター』としての評価軸が行政サイドで共有されていないことが原因になっている」と伊藤さん。展示では、北九州市漫画ミュージアムの表智之さんがキャラクターについてコメントすることで評価軸の一端を提示する。
風刺漫画にまつわる展示では、オーストリアの雑誌に掲載日露戦争でのフランスの中立義務違反を示唆するイラストを紹介。さらに、来場者自身がキャラクターになりきることで風刺漫画を再現できるよう背景パネルとロシアを意味する熊(のぬいぐるみ)と中立と書かれた傘を用意する。
「風刺漫画は時代性があって難しいと思うかもしれないが、作品の世界を超えたり自由にできるコスプレを通せば楽しいものになる。キャラクターを増やしたり関係性を変えたりして楽しんでもらえたら」と伊藤さん。
このほか、学習漫画をテーマにしたパネルには「からだのひみつ」に登場する「空気」「メタン」「二酸化炭素」を流行中の「イケメンキャラクター」に擬人化。好きに彼らの関係を書き込めるシートを配布するなど来場者自身が想像を膨らませて楽しむ仕掛けを施す。
伊藤さんは「漫画には今回紹介した以外にも様々な要素があるし、今回の要素だけでも組み合わせを変えると違った面白さがある。漫画ファン以外がもたらす見方を通じて、漫画を楽しんでもらえたら」と来場を呼び掛ける。
開館時間は10時~18時(最終入館は17時30分)。入館料は大人=800円、中高生=300円、小学生=100円。水曜休館。2月7日まで。