ちがいと共に生きる--アートから想像する他者とのつながり
「オールマイノリティプロジェクト」は発達障害者をはじめとするマイノリティが、社会的孤立・孤独に陥らないフェアな社会の実現を目指す研究開発プロジェクトです。当プロジェクト2025年度シンポジウム「修復の練習:当事者と非当事者の溝を埋める」に連動し、築92年の京町家建築The Terminal KYOTOにて、他者とのコミュニケーションや関係性の再構築に着目した展覧会を開催します。本展では、「壊さない」ことよりもむしろ、「壊れたものを修復する」ことの大切さに心を寄せる現代美術家の作品を展示し、分かり合えなさを共に超えていくための視点を提供します。
開催情報
「修復の練習」
To Mend, Again
2025年5月17日(土)~6月1日(日)9:30 - 18:00
会期中無休・入場無料
https://all-minorities.com/news/335/
会場:The Terminal Kyoto
京都府京都市下京区新町通仏光寺下ル岩戸山町424番地 TEL 075-344-2544
アクセス:京都市営地下鉄「四条」駅(6番出口)から徒歩6分、阪急「烏丸」駅から徒歩10分
参加作家:播磨みどり、猪原秀陽、佐々木萌水、?野湧、山本高之
Harima Midori, Inohara Hideharu, Sasaki Moemi, Uno Yu, Yamamoto Takayuki
キュレーター:金澤 韻 Kanazawa Kodama
主催:オールマイノリティプロジェクト
トークイベント会場協力:Panasonic Design Kyoto
(メッセージ)キュレーター 金澤韻より:
さまざまな特性を持って生まれ、いろいろな環境で育ち、それぞれの日常を生きるわたしたち。みんな、できること/できないことを抱えています。自分が当たり前にできることを他の人に当てはめると、時に誰かを傷つけます。逆もしかりで、多くの人が当たり前にできることができないとき、あなたは時に傷つけられてきたでしょう。
「こうであるはず」という思い込みが問題です。でも、思い込みの外側をあらかじめ想像するのは難しい。わたしたちはどうしても傷つけ合うことになります。
とはいえ誰かをレスキューすることはできるかもしれません。いえ、もうやってきているかもしれません。うまくくっつかなくても努力だけはしてきたかもしれません。
この展覧会では、バラバラのものをつなぎ合わせることを題材にした現代美術作品を展示します。そうして、壊れない・壊さないことより、壊れたものを修復することを考えてみたいと思います。
オールマイノリティプロジェクトについて
マイノリティの人たちは、そうでない人々(マジョリティ)からの孤立を避けるために、マジョリティの社会に馴染むための努力をしています。その結果、マイノリティの人たちには、マジョリティの人たちに比べ、さまざまな精神的な負担がかかっています。これは、そもそも社会通念や常識が、マジョリティの価値観の上に成り立っていることが要因のひとつといえます。オールマイノリティプロジェクトでは、マイノリティの中でもまずは発達障害に着目し、発達障害の人の価値観をマジョリティ中心の社会に浸透させるための活動をしています。
オールマイノリティプロジェクト ウェブサイト https://all-minorities.com/
代表:大島 郁葉(おおしま ふみよ)千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター 教授・博士(医学)・臨床心理士・公認心理師
【見どころ】
1. 発達障害研究と現代美術の越境的コラボレーション
本展は、発達障害研究の専門家のグループであるオールマイノリティプロジェクトが、現代美術を通じた交流の機会を構想したことから企画されました。医学・福祉・教育などの専門領域と、アートという別の言語が出会うことで、「わかり合えなさ」と共に生きる方法を新しい視点で問い直します。
2. “ズレ”や“分断”に向き合うアート作品群
本展に参加する現代美術作家たちは、バラバラになったものをつなぎ合わせることに心を寄せる作品を展示します。ズレや分かり合えなさを否定せず、むしろそれを出発点として関係を編みなおす姿勢は、現代社会において私たちが生きる上でのヒントとなるでしょう。
3. 京町家での豊かな鑑賞体験
築92年の京町家建築であるThe Terminal KYOTOは、生活と展示がゆるやかに重なりあう場所です。美術館とは少し違う、自然の光が美しい空間の中で、作品はわたしたちの生活と地続きの問いを投げかけてきます。
【出展作家略歴】
播磨みどり(はりま・みどり)
1976年横浜市生まれ。印刷メディアとそれにまつわる経験をベースに制作を行う。様々なメディア上に溢れるイメージの白黒コピーで作られた紙の立体やインスタレーションに加え、近年は、版画のプロセスやシステム、その相対的な在り方を使った身体の移動や移行による視点やアイデンティティの複数性について考察しながら、作品と作者の非中心的、非絶対的な在り方の可能性について模索している。近年の主な個展に「This Is A Mirror」(The Shirely Fiterman Art Center、ニューヨーク、2023年)、「裏側からの越境」(藤沢市アートスペース、藤沢、2022年)、近年の主なグループ展に「PAPER: かみと現代美術」(熊本市現代美術館、熊本、2022年)、「Lyrics, Gestures and Games」(Kala Art Institute、バークレー、カルフォルニア州、2017年)など。
播磨みどり(はりま・みどり)
2015年6月26日「お内裏様かお雛様」卵のプラスチックパック、いちご牛乳の容器、野菜チップの袋、青いビニール袋、ティーバッグ、ティーバッグの袋
猪原秀陽(いのはら・ひではる)
1985年埼玉生まれ。漫画家。多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。著書「We're バッド・アニマルズ」(ビームコミックス)。「オールマイノリティプロジェクト」ウェブサイトにて、発達障害当事者の視点を表現した漫画を発表。主な個展「漫画の木彫り」(MAT、東京、2023年)。
猪原秀陽(いのはら・ひではる)
漫画作品「発達障害」より、オールマイノリティプロジェクトウェブサイト、2023年
佐々木萌水(ささき・もえみ)
1991年北海道生まれ、京都府在住。漆作家。京都市立芸術大学大学院美術研究科工芸専攻漆工修了。過去から未来へ向かう人の営みや時間の連続性に焦点を当て、近年は京都市内を流れる川から採集した陶磁器片を漆で繋ぎ合わせた金継ぎや呼び継ぎなどの作品を制作する。主な個展に「街の貝殻」(ROD GALLERY、東京、2024年)、グループ展に「Kyoto Art for Tomorrow 2024 -京都府新鋭選抜展-」(京都文化博物館、京都、2024年)など。
佐々木萌水(ささき・もえみ)
「高瀬川水瓶」、漆、高瀬川の磁器片、銀、錫、麻布、砥の粉、和紙、木、フェルト、110×100×180mm、2024年 撮影:来田猛
?野 湧(うの・ゆう)
ワレモノとしての陶磁に着目し、あえて破損や経年変化を取り入れながら作品を制作する。文化や美術の歴史における保存の在り方を念頭に、ものの存在やものへの触れかた、その遺し方についての新しい視点を提案する。主な発表に個展「呼び戻されるフレーク」(GALLERY crossing、岐阜、2024年)、「われてもすえに・その後1」(LAD GALLERY、名古屋、2022年)など。
?野湧(うの・ゆう)撮影:Masashi Kuromoto
「新潟にて-1」陶土、金属顔料、和紙、和糊、アクリル、パネル H460×W300×D22mm、2024年
山本高之(やまもと・たかゆき)
子どもの会話や遊びに潜在する創造的な感性を通じて、普段は意識することのない制度や慣習の特殊性や個人と社会の関係性を描き出してきた。近年は地域コミュニティと協働して実施するプロジェクトや、一般を対象としたオルタナティヴなアートスクール・プログラムにも取り組んでいる。ロンドン大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを修了。国内外の展覧会参加多数。個展「Children of men」(アートラボあいち、愛知、2017年)、「どんなじごくへいくのかな」(角川武蔵野ミュージアム、埼玉、2025年)。国際芸術祭「あいち2022」(愛知、2022年)ではラーニング・キュレーターを務めた。
山本高之(やまもと・たかゆき)
『悪夢の続き』 シングルチャンネル 30分31秒、2020年
【キュレーター略歴】
金澤 韻(かなざわ・こだま)現代美術キュレーター。メディアアート、漫画、地域とアート、障害とアートなど既存の美術の枠を超える領域を扱い、時代・社会と共に変容する人々の認識を捉えようとする企画を国内外で行う。コダマシーン共同代表。京都芸術大学特任准教授。
【関連プログラム】
トークイベント
ズレを合わせつつ ~「修復の練習」を語る~
5月18日(日)午後4時~6時
会場:Panasonic Design Kyoto 9Fホール
登壇者:
土屋賢治・特任教授(浜松医科大学)
和田真・脳機能系障害研究部 発達障害研究室長(国立リハビリテーションセンター)
大島郁葉・教授(千葉大学)
+本展参加アーティスト及び本展キュレーター
無料・要申込
申込フォーム:https://forms.gle/VCLg6NdDMpRwmEWS6
【問い合わせ先】
??展覧会について:
「修復の練習」事務局(株式会社コダマシーン内)
Eメール:shufuku.lenshu@gmail.com
??オールマイノリティプロジェクト(主催者):
オールマイノリティプロジェクトHP内のフォームよりお問い合わせください。
https://all-minorities.com/contact/
【ダウンロードリンク】
広報用素材は下記からダウンロードをお願いします。
https://x.gd/4y58q
The Terminal KYOTO について
「The Terminal KYOTO」(ザ ターミナル キョウト)は昭和初期に建てられた京町家を未来に残していくことをコンセプトに復元工事し、多くの人々に開かれているカフェ、アート・ギャラリー、イベントスペース。駅や港を意味する「ターミナル」の名のもと、人々が交わり、衣食住や職人の技、知恵が行き交う場として開かれている。失われゆく京町家と文化の再生を目指し、京都の景観と記憶を未来へとつなぐ。
The Terminal KYOTO ウェブサイト:https://kyoto.theterminal.jp/