今年6月にオープンした小劇場「THEATRE E9 KYOTO(シアターイーナイン)」で10月7日、京都市が発表した京都駅東南部エリア「都市計画の見直し素案」を考える緊急シンポジウムが行われた。主催は同劇場を運営する「アーツシード京都」。
最初に同団体代表で劇場の支配人を務める蔭山陽太さんが、京都市は文化芸術を基軸とした街づくりをめざすことを主たる目的として土地の用途制限を大幅に規制緩和する「都市計画の見直し素案」を8月に発表し、9月には公開2回、非公開2回の住民説明会が行われたものの、説明不足や住民の生活への配慮が見られないという住民の不安から会が紛糾したというこれまでの経緯を説明した。
韓国語で「広場」を意味し、27年続くイベント「東九条マダン」の実行委員長を務めるヤン・ソルさんは「京都市が『マダン』のように苦悩や人生といった生活の中から生まれた文化や芸術を取り込む気持ちがあれば手をつなぐことができるが、現状ではそれが見えない」と訴えた。
ヴォイスギャラリーの松尾恵さんは「街全体が芸術家を育てる目線を持っている」と指摘し、「若いアーティストを支援する制度や施設・人インキュベーター(ふ卵器)としての資質を新しい時代に活用してほしい」と提言。大阪市立大学名誉教授の佐々木雅幸さんは、イタリア・ボローニャで、倒産したスーパーを若い音楽家に貸し出してインキュベーション施設にすることで成功した事例を紹介した。
京都市立芸術大学の佐藤知久教授は移住を促進するという方針を評価しつつ、一方で用途変更で商業地域にすると地価上昇が予見できるのに、今すぐに用途変更は必要かと疑問を呈し、若者やアーティストが住む環境を作ろうとしているのか、京都市の持つ具体的なイメージについて腹を割って聞く場を設けたいとの要望を挙げた。
最後にアーツシード代表のあごうさとしさんが、劇場が「排除より寛容に」という立場から、豊かな暮らしが彩られることを願い、欠損させられた未来を迎えたくないという思いから京都市とも地元とも明るい未来を進めていきたいという希望を述べ、これからも問題に取り組むことを表明して会を締めくくった。