清水寺(京都市東山区)で旧暦の4月8日(釈迦の誕生日=花祭り)に当たる5月12日、閉門後の特別拝観「暗闇の清水寺」が行われた。
特別なライトアップをあえて行わない同拝観では、最初に同寺執事補の森清顕(せいけん)さんが、重要文化財の「西門(さいもん)」を紹介。「日暮れの山の向こう側に見える明るい世界に、極楽浄土を見て、往生できるよう手を合わせたと思えば、京都市内の景色が違って見えるかもしれない」と話した。
本堂では森さんが経文を読み上げ、参加者は思い思いの場所で読経を聞きながら手を合わせたほか、本尊とつながった五色のひもに触れて仏縁を深くした。
「経堂」では、同日の「母の日」にちなみ、プラントハンターの西畠清順さんが1000本の白いカーネーションを生け、その中に仏の思想を表す手ぶりの形をした流木を据えた作品「花釈迦」を奉納した。
西畠さんは「植物の命を奪っている」ことに苦しんだ日々と、「ほかの命を得てしか生きられない自分を認められたことで立ち直った」との経験談を話した。西畠さんの話を受けて、森さんは「お釈迦さまが、恵まれた境遇を捨てて外に飛び出したのは、誕生から7日後に亡くなったお母さんのこともあったのではないか。『一切皆苦(世の中が全て苦しみ)』だと西畠さんのように認めた、受け入れていったのではないか」と話す。
友人と参拝に訪れた寒川和恵さんは「西畠さんの白いカーネーションに感動した。母には花を贈ったが、祖母の命日を思い出した」と話していた。