京都国立博物館(京都市東山区)で現在、「雛(ひな)まつりと人形」が行われている。
ひな人形の起源は、上巳(じょうし)の節句は、けがれをはらうための行事と、公家の女子の間で行われた盛大な人形遊びの「雛(ひいな)遊び」が結び付いたものといわれ、現在のような人形を飾るのは江戸時代の初めごろとも。
展示では、上巳の節句にけがれを移すために使われた人形から発展したと考えられる「天児(あまがつ)」や、「立雛(たちびな)」、現在のひな人形の原型と言われる「古今雛(こきんびな)」など数種類のひな人形を展示し、その変化を紹介する。
人形の並びはいずれも向かって左が女びなで右が男びな。これは、関西(上方)を中心とした並べ方で、関東を中心に逆で並べることが多いという。展示を担当した学芸員の山川曉さんは「明治時代には宮中にも西洋式が取り入れられ、昭和天皇の即位式の写真を見て東京の人形業界で左が男びな、右が女びなに置き換えたという一説もある」と話す。
ひな人形は裕福な町衆の間でも飾られるようになるが、並べ方はどのようにして知ったのだろうか。山川さんは「宮中に出入りする御用達などを通じて公家とのつながりもあり、有職(ゆうそく=宮中に伝わる学問)が上流の町衆にも伝わっていたので、向かって右が上位という推測も可能だったのでは。江戸期には出版も盛んになったので婚礼などの教則本もあった。さらに、江戸の後期には、大名家に仕える町方の女子が家族を招いて(庭から)人形を見せる『雛拝見』の機会もあったので、知る機会は多かったのでは」と推測する。
「人形を飾ったり、子や孫に贈ったりするなど遊ぶためではない人形が身近な文化というのは日本らしいと感じる。季節感を感じてもらえる楽しい展示になれば」とも。
開館時間は9時30分~17時(金曜・土曜は20時)。月曜休館(月曜が祝日の場合は翌火曜が休館)。入館料は一般=520円、大学生=260円、高校生以下と満18歳、満70歳以上は無料。3月18日まで。