京都市内に9月27日、埼玉大学教育学部附属中学校3年生174人が修学旅行に訪れた。
同校教諭の岸本航司さんによると、2年生後期から同校で「日本文化探求講座」を受講。修学旅行は講座の課外授業に位置づけられており、生徒たちは約半年かけて、テーマを深め、探求の切り口を決めて、当日のガイドに質問のやりとりをするなどして準備を進めてきたという。10月には旅行で学んだ内容の発表を行う。
テーマは全36コース。2日目の班別行動では、西陣織や能面、漆工芸の職人を訪ねた。「京都の台所」として知られる錦市場で買い出しをして、おばんざいづくりに挑戦した班もあれば、町家建築を学んだり、NPO担当者から里山を学ぶ「自然との共生」、海外からの旅行者に対するおもてなしを考える「グローバル」といった京都の課題を考えたりするコースも新設された。
200年以上の歴史を持つ麩屋「麩太」(中京区)の青木太兵衛社長の講話や、京都錦市場商店街振興組合青年部会前会長で漬物店の「桝悟(ますご)」の社長の宇津康之さんに話を聞くといった京都の商習慣を学ぶ機会も設けられた。
宇津さんは錦市場の青物店に生まれた伊藤若冲が生誕300年を迎えることにちなんだ取り組みを紹介。「京都の商売は『一見さんお断り』など冷たい印象を持つかもしれないが、一度付き合いが始まればとことんまで付き合う。代をまたいで続くのでおのずと慎重になる」と説明。生徒たちも熱心にメモを取ったり、「海外からの観光客が増加しているが、地元の人にも利用しやすい取り組みはしているのか」などと質問したりしていた。
36コースのうち12コースは北野界わい創生会に所属するガイドが案内。ガイドは専門性が高く、ガイドブックや教科書には載らない歴史や土地のいわれといったガイド本には無い「ディープ」な内容で地元でも人気が高い人をそろえる。同会代表の鳥井みつひろさんは「生徒も準備してきているので高度な質問が飛ぶこともある。ガイド側も刺激になっているようだ」と話す。
首藤敏元校長は「2年前から修学旅行での取り組みを強化する中で、地元のプロを依頼している。生の声を聞き、考えることで、実体験として日本の伝統を感じ取ってほしい」と話していた。