着物のコーディネートがワンピース歌舞伎の「正装」とSNSで紹介された女性に話を聞いた。
事の発端は昨年上演された「ワンピース歌舞伎」の観客が発信した投稿。着物を着た女性の後ろ姿と「ワンピース歌舞伎にて、素敵(すてき)な装いの方を発見(中略)これぞワンピ歌舞伎鑑賞の正装だ…カッコ良すぎー!!」と投稿したところ、賛同のコメントや2500件を超えるリツイートが寄せられた。
投稿者のmag0213さんは「作品の世界観を見事に取り入れたセンスの良いコーディネートとさらりと着こなすカッコ良さ、それを劇場で目撃してしまった私の衝撃と興奮を感じてほしいと思って投稿したが、反響が大きくて驚いた。『歌舞伎鑑賞といえば着物』という憧れや、ふんわりしたイメージの一歩先を行くようなインパクトがあったのでは」と分析する。
着物の女性は、六角大宮で着物店「サロンドハピネス」(中京区)を営む若柳衣華(わかやぎきぬか)さん。若柳さんは、大好きな甲子園にもタイガース柄の着物で観戦に行くほどで、洋服を着るのは年に十数日だという。ワンピース歌舞伎のコーディネートについて、「着物は気に入って購入したものの、袷(あわせ・裏地付きの生地)に夏柄の碇なので、着るタイミングが難しく、5年ほど着ていなかったという。帯と合わせたときには「これならぴったりや」と大興奮だったと明かす。
3歳から日本舞踊を学び師範資格を持つ若柳さん。幼いころから稽古着である着物には、特別な思いも無く、むしろ海外への憧れが強かったという。ファッションが大好きで、洋裁の専門学校に進学。卒業後はロンドンに語学留学し、現地のアパレルメーカーに就職した。日本拠点の立ち上げのため帰国した後に退職。日本に戻ると、気付かなかった日本や京都の良さを感じたという。
京都に戻ってから思い立ってイギリス時代に集めていたアンティークのテキスタイルを使った帯を作ると「かわいい」と好評だった。時代に合った方法を取れば着物を仕事にできると決意を固め、オリジナル着物のネット販売を始めた。京都の呉服店はどこも大変なのに和装に手を出して大丈夫?と心配されたこともあった。「『ファッションとしての着物』のニーズはまだまだある。可能性は大きい」と力を込める。
写真に反響があったことを若柳さんに伝えると、「たくさんの人に共感されているようでうれしい。着物には本当に周りの人まで笑顔にする力がある。次回の公演もこのコーディネートで出掛けたい」と笑顔を見せていた。