京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺)で5月27日、「上村松篁」展が始まる。
日本画家の上村松園の長男として1902(明治35)年京都市内に生まれた上村松篁は、1921(大正10)年に京都市立絵画専門学校に入学。西山翠嶂に師事した。戦後間もなく旧態依然とした日展を脱退し、翌年には奥村厚一、秋野不矩、吉岡堅二、山本丘人らとともに「創造美術協会」を結成。徹底した写生と、近代的な構成を持つ花鳥画を制作。母校での後進の指導にもあたり、親子2代での文化勲章を受章した。
同展では、幼いころからずっと観察し続け、絵画専門学校の助教授だった入江波光に「金魚で絵描きになった」と言われたという金魚の素描や、「樹下遊禽」「孔雀」「丹頂」などの本画の代表作、井上靖の歴史小説「額田女王」の挿絵原画など、約70点を、一部を除き、卒業制作となる「春立つ頃」から晩年までの順に展示する。
松篁の長男で日本画家の上村敦之さんは、「花鳥画は、対象と同じ視線で語り合い、自然との一体感が重要。しかし現在は衰微が進んでいる」としたうえで、「父がどのように花鳥画に進んでいったのか。その背景を知って糧にしてもらえたら」とあいさつした。
「直接絵について言うことは少なかったが、壁を3度乗り越えなければ『作家』とは言えないと言われ、壁沿いを行くのではだめなのだと教えられた」とも。「父は本当に鳥が好きで優しい目で写生していた。15年も前に写生した鳥をまた写生したいと連絡してきて、代わりを探すのが大変だったこともあった」など当時のエピソードを交えながら振り返った。
開催時間は9時30分~17時(金曜は20時まで、入館は閉館30分前まで)。観覧料は、一般=1,300円、大学生=900円、高校生=500円ほか。