京都の夏の風物詩「京都五山送り火」が8月16日、行われた。送り火は、再び冥府に帰る精霊を送る意味を持つ伝統行事でこの日は市内のビルもライトダウンを行っている。
今年は、津波の被害を受けた陸前高田市のまきを使う計画が進められていた。計画は、大分市の美術家、藤原了児さんが発案したもの。自ら松をまきに加工、まきに書くメッセージを募るなど準備を進めていた。不安の声が寄せられたため放射線の検査を行ったが、放射性物質は検出されなかった。しかし放射性物質が検出されない値で「0ではない」との意見が保存会から出され、使用しないことを決定。このまきは、保存会が8日に陸前高田市で行った「迎え火」でたき上げられた。
その後、京都市からの要請を受け、保存会は福井県のNPO団体から新たにまきを取り寄せた。しかし、表皮の部分から1キロあたり1130ベクレルの放射性セシウムが検出される。京都市は放射性物質が検出されない前提で実施協力を要請していたため、送り火での使用を中止。同市は「まきは屋外に長期間、野積みにされ、また、一部には泥もかぶっていたという固有の状況があったことから、放射性物質が検出されたと考えられ、決して被災地の産品が同様であるということではなく、被災地の産品に対する誤解につながることがないよう」呼び掛けている。
当日、点火の前には、震災で亡くなった方へ黙とうがささげられた。「大文字」から点火が行われ、地元の住民や観光客らはそれぞれの思いを胸に静かに輝く文字を見つめていた。