漢字能力検定協会(京都市下京区)が3月、京都大学医学部医学科の5回生・西嶋佑太郎さんの論文を「漢字文化研究奨励賞」最優秀賞に選出し、同26日、授賞式を行った。
同賞は漢字文化に関わる分野の研究や調査に対して授与する賞で、今年で9年目。最優秀賞は初回以来「該当無し」が続いており、8年ぶりに受賞者が出た。医学部出身の受賞者は今回が初めて。
西嶋さんの論文のタイトルは、「日本語医学用語の読みの多様性と標準化-楔(くさび)字を例に-」。論文では、医学用語の読み方が学科や専門によって異なる読み方をすることに着目。例えば「楔入圧」は、「せつにゅう」「きつにゅう」「けつにゅう」など、テキストによって異なる読み仮名が振ってあるという。論文ではこれまでの標準化への取り組みや、標準化が難しい現状とその背景についても触れる。選考委員からは、「医学界における用字用語の整理に関する重要な提言」「これ以上望めない完成度」と全会一致で授賞が決まったという。
西嶋さんが漢字に興味を持ったのは幼稚園のころ、祖父から書道で使われる「くずし字辞典」を与えられたのがきっかけ。何度も書き写して遊んだという。中学生の頃に新しい漢字の知識が増えるのがうれしく、のめり込むように漢字を覚えた西嶋さんは中学3年生で漢検1級に合格。その表彰式で同賞の論文集を手に取り、「いつかは応募してみたい」と意識するように。2006年に高校生の時に応募した論文は佳作に入選した。
選考委員の笹原宏之教授から今後の研究について聞かれた西嶋さんは「今年は国家試験や専門を決めるので忙しいが、いずれは漢字研究を深めたい」とはにかみながらも意欲を見せる。
論文は同協会ホームページで公開する予定という。