京都劇場(下京区)で1月31日、「琳派400年記念祭 開幕記念フォーラム」が開かれ、細見美術館館長の細見良行さんと明治大学教授の山下裕二さんの講演が行われた。
細見美術館(東山区)は、細見さんの祖父、古香庵から3代にわたるコレクションを展示。特に、琳派と伊藤若冲は、同館の「顔」となっている。「毎年切り口を変えて琳派の展示を行ってきたが、ここまで盛り上がるとは20年前には考えられなかった」と細見さん。
最初に細見さんが紹介したのが俵屋宗達の「風神雷神図」。「この筋肉の表現は他にはないね」と細見さん。システィーナ礼拝堂に展示されているミケランジェロの「最後の審判」を見たときに、筋肉の描き方がそっくりで風神雷神図にしか見えなかったと振り返りながら、「日本絵画でこんな筋肉は見られない」とコメント。山下さんも「宗達は筋肉フェチだね」と応じた。風神雷神図は像を元に描かれたとされており、「彫刻の表現を絵画に持ち込んだのかもしれない」と解説した。
風神雷神図の「非常に高度な引用」として山下さんが紹介したのが、会田誠さんの「美しい旗(戦争画RETURNS)」。日章旗を持つセーラー服の少女と、太極旗を持つチマ・チョゴリを着た少女が対峙(たいじ)しており、足元にはがれきの山が描かれている。日章旗の少女の足に巻かれた包帯やチマ・チョゴリの胸のリボンがはためく様子は雷神の布の引用だと指摘。旗が風をはらんでいる様子も風神の持つ袋の様子にも通じると解説した。同じく会田さんの作品は、洛中洛外図を下敷きとした紐育(ニューヨーク)空爆之図(戦争画RETURNS)も紹介した。
スミソニアン博物館にある、アジア美術専門とするフリーア美術館で、細見美術館の作品2点を含む俵屋宗達の作品が展示されることや、尾形光琳300年忌に合わせて、光琳の二大傑作の国宝「燕子花図屏風」、国宝「紅白梅図屏風」を所蔵する根津美術館と熱海のMOA美術館の2館がそれぞれテーマを変えて2作品を一度に展示する特別企画を紹介。山下さんは、「今年は各地で琳派が吹き荒れるので、皆さんぜひ足を運んでいただければ」と締めくくった。
イベントでは、筝曲家の大谷祥子さんと、鬼太鼓座による和太鼓の俵屋宗達の風神雷神図をモチーフにした演奏が行われた。金剛流若宗家の金剛龍謹による半能「山姥(うば)」の上演では、本阿弥光悦の山姥の能面が投影される演出も行われた。