柳馬場御池のギャラリー「3F project room」(京都市中京区柳馬場通御池下ル柳八幡町)で現在、荻野NAO之さんの写真展「太秦」が開催されている。
同展では、荻野さんが2009年から太秦の東映京都撮影所で撮影した6万枚以上の写真の中から、美術担当の職人や、太秦で働く人が大切にしているという桜の巨木の周りの景色など中心にキュレーターの旦部辰徳さんが24枚を選んで展示。現在開催中の国際写真展「キョウトグラフィティ-」のサテライト展でもある。
撮影所ではがらんとしたスタジオにセットが組み上げられ、壊され、掃除して清められることを繰り返す。「生み出すためのサイクルがあるだけでなく、そこで生まれるものがうまく成長するのかは分からない」。そんな撮影所を荻野さんは「子宮」に例える。
現場で働く職人にカメラを向けるものの当初はうまくいかなかったという。「正面から撮影しようとするが、距離感がつかめなかった。初めの1年は何を撮影しているのか分からず使えない写真ばかりだった」と明かす。職人の仕事は完璧に仕上げても映像に残るとは限らないが、それについて怒らない。「自分の仕事が作品の世界をつくり出すことで、俳優がいい演技ができたらそれでいい」と黙々と仕事をこなしていたという。「見えることのない裏側の部分に気付かされた」と荻野さん。それからは、職人の正面ではなく背中や影を撮影するようになり、普段の生活でも物事の反対側について見るようになったという。
会場では撮影所に見立てた明かりの下、撮影所の見えにくい黒のグラデーションをのぞき込んでもらおうと工夫を凝らす。「展示を見てもその時は『分からないな』で終わってしまうかもしれない。5年10年たった、未来のために種をまきに来てもらえたら」
開催時間は13時~19時30分。水曜定休。入場無料。5月7日まで。