京都アスニー(中京区聚楽廻松下町)で10月8日、お笑い芸人と図書館司書のビブリオバトルが行われた。
今月12日から始まる京都国際映画祭のプレイベントとして行われた同企画。図書館司書とお笑い芸人が「本のプレゼンバトル」であるビブリオバトルを行った。ルールは、5分間で本を紹介し、3分間の質問タイムを通じて一番共感を集めた「チャンプ本」を決めるもの。
今回参加したのは、吉本のお笑い芸人コンビの「ヘンダーソン」と「さや香」、京都市図書館司書の森裕一郎さん、二矢(ふたや)朋香さん。ヘンダーソン子安裕樹さんは司会を務め、芸人3人と司書2人の対決となった。
一番手に登場したのはビブリオバトルの経験が豊富な東山図書館の森さん。「締め切りに追われたことの無い人はいないはず」と切り出し、文芸や漫画の作家が締め切りが守れない言い訳やその苦しみをつづった文章を集めた「〆切本」を装丁や帯の面白さや章ごとに色が変わっていくことを含めて紹介。「勇気を持って締め切りに立ち向かいたい人は読んでみてください」と締めくくった。
二番手の下京図書館の二矢さんの桜庭一樹さんの「傷痕」を紹介。同作はマイケル・ジャクソンをモデルにした同作品。二矢さんはポップスターの「彼」を訴えた女性「ヴェンデッタ(復讐)」に注目。世界中のファンからは恨まれ、父親には示談金を持ち逃げされて、日なたを歩けなくなった彼女がなぜか両者を恨まない。「この謎は、親子関係を描く桜庭さんの持ち味が出ているのでぜひ読んで確かめて。誰もが誰かと悲しい別れがあるが、その時に少しだけ前向きに、立ち上がる力をくれる本」だと取り上げた理由を語った。
三番手となったさや香の石井誠一さんは漫画「よつばと!」を紹介。「5歳の「よつば」の目を通すと、雨が降ってきただけでわくわくしたり、神社の階段を上りきったときの景色などの日常に感動するし、どこか懐かしさを感じる。景色の美しさが細かく描き込まれていて、ストーリーもゆったりと進んで、文字も少なめ。とにかく読んだらわかるから」とプレゼンした。
四番手のさや香の新山士彦さんは岡本太郎と岡本敏子の「愛の言葉」を紹介。恋愛相談によく乗り「恋愛マスター」を自認する新山さんは「俺、いつ出版したっけと思ったくらい、言っていることが書かれていた」と話す。審査委員長でアートユニット「パラモデル」の中野裕介さんから「岡本太郎は破天荒なアーティストだが、愛の言葉はどんな感じなの」と聞かれ「狂気めいた純粋さがある」と答えると「作品にも通じるものがある。読んでみたい」と興味を引かれた様子だった。
最後のプレゼンターとなったヘンダーソンの中村浩士さんは東野圭吾さんの「赤い指」を紹介。「推理本ですが、これは、最初に犯人が犯罪を犯すところから始まる、そう、古畑任三郎の形式なんです」と物まねを交えて紹介。最後には「実は半分も読めていないんですけど、さっき携帯で結末を知りました。新幹線の中でしか本は読めないんで、次東京に行くときに読みます」と、会場を笑わせていた。
最後に投票が行われ、会場の拍手が多かった二矢さんが勝利した。審査委員長の中野さんは「ビブリオバトルは『本を通じて人を知る、人を通じて本を知る』というけれど、まさに司書さんからは本の良さが伝わったし、芸人さんからはその人となりがよく伝わったのでは」とまとめた。
京都市教育委員会事務局の松野義明さんは「京都市図書館ではビブリオバトルに力を入れているが、今日のように芸人さんが笑いを交えてプレゼンしてくれたので、固くならずに参加できるものだと伝わったのでは。12日からは、図書館に読書好きな芸人さんのおすすめ本も並ぶので、そちらも見て欲しい」と話していた。