京都国際マンガミュージアム(京都市中京区烏丸通御池通上ル)で現在、「『描く!』マンガ展~名作を生む画技に迫るー描線・コマ・キャラ~」が開催されている。
大分県立美術館から始まった巡回展で、関西で唯一の開催となる。展示では、漫画の大きな要素となる「描線」にスポットライトを当て、戦後から現在の漫画家13人・生原稿約300点を時代ごとに並べて描線の変遷を解説する。
同館の学芸員の伊藤遊さんは「戦後活躍した手塚治虫に見られたフラットな線は1950年代後半ごろから流行した『劇画』によって時代遅れになる。この時に活躍したのが『ゴルゴ13』で知られるさいとう・たかをさん。その後、1970年代に再び均質な線が見られるようになるなど、主流と非主流が入れ替わる日本の漫画の変遷が分かる」と話す。漫画家の田中圭一さんの模写と解説のコーナーも人気で、「まとめて見たい」と図録を購入する人もいるという。
展示では、劇画の特徴を盛り込んだ「熱血ギャグ」というべき独自のジャンルを持つ島本和彦さんの作品や、省略されがちな背景を「もう一人のキャラクター」のように丁寧に描くあずまきよひこさん、作品ごとに作画の分担を複雑に変えてさまざまなジャンルに取り組む2人組の漫画家PEACH-PIT(ピーチピット)さんを取り上げる。展示の一部は撮影も許可されている。
海外では美術を学んだ人が漫画家になることが多いのに対して、日本では漫画の読者がそのまま漫画を描くことが多いことに注目。手塚治虫や赤塚不二夫、竹宮恵子さんらがデビュー前に描いていた作品を公開するほか、漫画文化を生み出した雑誌の投稿欄や漫画研究会の会誌、同人誌即売会などのコミュニティーを紹介する。
展示の最後の章には雑誌や単行本にとどまらない新しい漫画の展開にも触れる。大学の漫画教育のパネル展示や、インターネット上のイラスト投稿サイト「pixiv(ピクシブ)」の最新の投稿を投影する。伊藤さんは「非主流から主流となる漫画が生まれてきたように、インターネット上から今までの常識を覆す大作が生まれてくる可能性があるかもしれない」と話す。
会場には来館者がペンで絵を描ける一角も設けられており、海外からの旅行者が、思い思いの絵を描く様子も見られた。
期間中の土曜・日曜・祝日は、Gペンとインクで作画体験ができるワークショップを開催する。関連企画として5月3日に田中圭一さんと吉田戦車さんの対談とサイン会も開催される(いずれも料金は無料だが、入館料が必要)。