子ども向けの「伝統産業品」販売を手掛ける「aeru gojo(アエルゴジョウ)」(京都市下京区松原通室町東入玉津島町、TEL 075-371-3905)で5月21日、「畳」をテーマにしたトークイベントが行われた。主催は「和(あ)える」(東京都港区西麻布)。
京都の町屋や茶室で畳の一部を入れ替える今の時期に合わせ、「京都の畳屋さん×和(あ)える矢島のトークナイト」と題して開いた同イベント。
この日は、「和える」社長の矢島里佳さんと、同店の畳を作った創業1752年の老舗畳店「菱屋畳 佐竹商店」(京都市中京区)社長の佐竹真彰さんが、畳の材料となる「い草」の生産事情や、畳の作り方などを対談形式で解説したほか、畳の入れ替え実演を行った。
佐竹さんによると、茶釜を温める炉を入れるために一部を正方形に切った「炉畳(ろだたみ)」と呼ぶ冬用の畳は、5月以降、釜は畳の上に板敷きで置く茶道の作法から、毎年この時期に普通の畳と入れ替えるという。
畳の入れ替え実演では、先端を畳に差し込んで使う「敷き込みかぎ」を佐竹さんが迷いなく畳に刺して持ち上げると、間近で見ていた参加者は、普段見ることが少ない職人の道具と技に驚いていた。佐竹さんは「なでてやれば元通りになる」と説明しながら、穴の空いた隙間を整えた。
会場ではこのほか、同店の畳に近い物と、「近年よく使われるようになった」という発泡スチロールや木の板を使った畳を用意し、畳の製法による座り心地の違いも解説した。佐竹さんによると、「畳床(たたみどこ=い草の下の部分で座り心地を左右する部分)は本来、稲わらを多く含んだ物を使うといい、「柔らかく、座布団がなくても足が痛くなりにくい。固い物は座布団が無いと長い時間座れない」という。
「そもそも畳は、板の間に座っていた日本人が柔らかいところに座るために作られた物。高級品だけでも困るが、若い職人が伝統的な製法を修業して、身につける機会が今は少なくなっている」と佐竹さん。
矢島さんは「畳と一言で言っても、私たちの知らない先人の知恵や職人の工夫が詰まっている。素材や製法の違いを知り、今の自分にあった物、使いたい物を多くの人と未来の子どもたちが選べるよう、これからも日本の伝統的なモノづくりを発信していきたい」と意気込む。