東山のギャラリー「KUNST ARZT(クンストアルツト・京都市東山区夷町)」で6月23日から大石茉莉香さんの個展「Q0Q0Q0Q0Q0Q0Q0Q0Q0…」が始まった。
大石さんは1988年大阪生まれ。京都精華大学を卒業後、大阪教育大学大学院芸術文化 絵画コース修了。修了後の2012年の「Q1」展から、原爆や9.11などの事件の画像を巨大な紙に印刷し、見る角度で白にも黒にも見える銀色のペンキでペインティングする作品を手掛けている。いずれのタイトルにもQuestionを意味する「Q」を入れる。
題材は、「ひび割れた日の丸」を東日本大震災直後に描いたアメリカの「ビジネスウィーク誌」の表紙と、それに対して在ニューヨーク総領事館が抗議したことを伝える新聞記事の2つ。当時ニューヨークに滞在中だった大石さんは同誌を購入し、帰国後に記事の存在を知った。ものの見方が「向こう側とこちら側」で違うと感じたことがきっかけとなったという。
初日となる23日は、ライブペインティングを実施。表紙の画像は、縦が2メートル以上も引き伸ばされて画質が荒くなり、四角いセルが集まったように見える。荒い画像を使うことで、鑑賞者の事件への認識の甘さも浮き彫りする意図もあるという。その紙に大石さんは、銀色のペンキを含ませた筆を押しつけるようにドットの「Q(Question)」を描き入れる。画面を埋める銀色のペイントの向こう側に事件を見せることで、見る人と事実の距離感を表現するという。
「(過去にモチーフにした)原爆や津波の景色は、実際に見た人はほんのわずか。けれども、多くの人がその映像や写真を知っている不思議さを形にしたい。社会派だと言われることが多いが、自分の色や思いを絵に入れないように気を付けている。そんな見方もあるのかと人に言われて気づくことも多い」と大石さん。
開廊時間は12時~19時(最終日は17時)。6月28日まで。