相国寺近くのコワーキングスペース「Impact Hub Kyoto」(京都市上京区相国寺門前町)で7月5日、「終活」の勉強会が行われた。主催は「こころの道プロジェクト」(下京区)。ゲストには、NP少額短期保険(千代田区)の倉田琢自さんと、真言宗泉涌寺派「城興寺」(南区)住職で「終活駆け込み寺」を主宰する上原慎勢さんが登場した。
倉田さんは外資系保険会社を経て2007年に同社を設立。終活を考える人から、「葬儀代程度の少額が保障されて、高齢でも加入できる保険はないか」という要望を形にした「葬儀保険」の開発者として知られる。講演では、当時70代だった父親が書いたエンディングノートを参加者に見せ、どのように役立てたかを紹介。エンディングノートに書かれた「延命治療の辞退」の意志と、患者を救うことに全力を尽くす病院側のかみ合わない現状も紹介された。倉田さんは、ノートの長所として「父の生い立ちや、どのような仕事、生活をしていたのか、友人関係など、初めて知ることが多かった。そうした内容をストーリーにした会葬礼状は増刷が必要なほど好評だった」と振り返る。
上原さんは、城興寺を含む4つの寺と、弁護士や税理士、司法書士、行政書士が連携を取る「終活駆け込み寺」を昨年立ち上げた。寺が窓口となり、事例に応じて専門家を紹介する。専門家への相談は、初回に限り無料にしている。
先立たれた妻と同じ墓に入るつもりで準備をされていた檀家(だんか)の男性が亡くなったと突然連絡があり、家に行くとさら地になっていて遺骨も出てこない。こちらで供養させていただいたが、寺の方から檀家や信者に対して積極的に手を差し伸べないといけないと感じた」と立ち上げのきっかけを紹介。「寺ができる『終活』の取り組みは、話を真剣に聞くことに尽きると感じている。取り組みに賛同してくれる仲間がいれば宗派を問わず一緒にやっていきたい」と展望を語った。
参加者からは、2人の取り組みや、エンディングノートについての質問が寄せられた。「書こうと思ってもなかなかできないもの。1行や2行でもいいので10年かけるつもりで書いてほしい」などのアドバイスを行った。
「メディアなどから伝えられる『終活』やエンディングノートなどはキラキラとした前向きな話につなげがちだが、先送りしたいが覚悟を決めて向き合っていくべきものと考えている。今後もこうした勉強会を各地で開いていきたい」と主催者の船田幸男さんは締めくくった。