映画「それでもボクはやってない」の公開に合わせ、TOHOシネマズ二条(中京区西ノ京栂尾町、TEL 075-813-2410)で2月20日、周防正行監督が舞台挨拶を行った。
「Shall we ダンス?」以来11年ぶりの作品となる「それでもボクはやってない」。当日3回目の上映終了後に行われた舞台挨拶は、会場を埋めた約200人の観客との一問一答形式で進められ、特に女性ファンからの質問が目立った。
「26歳のフリーターを主人公に設定した理由は?」との問いには、「守るべきものがなるべく少ない人を選んだ。痴漢冤罪の悲惨さだけを訴えるなら、妻子のいるサラリーマンの方が効果的だが、家族や会社の人間関係など描かなければいけないものが多すぎる。しかし、この映画で見せたかったのは痴漢事件を題材とした刑事裁判そのもの。守るべきものは自分の心一つという主人公にして、裁判そのものに集中して観てもらいたいと思った。一つの裁判の全法廷シーンを見せた映画は、これまでほとんどなかった」と周防監督。
2年後の裁判員制度導入に触れた質問に対しては、「この映画ではあえて、冤罪は裁判官が悪いという視点に立った。このままでは、日本の裁判は永遠に変わらないという危機感を持っている。無実の人を罰してはいけない。裁判官に、一般の人の考えや言葉を投げかけることはきっと大きな力になると思う。積極的に参加してください」と力強く呼びかけ、会場から拍手を浴びた。
終了直前には、息子が今まさに映画と同じ裁判を受けているという女性が、周防監督に感謝の言葉を述べる場面も。「この映画はほぼ100%事実に近い。司法改革への第一歩になると思っている」という女性の言葉に送られ、監督は舞台を後にした。
京都市内ではほかに「新京極シネラリーベ」(中京区新京極通り)でも上映中。