京都文化博物館(京都市中京区三条高倉、TEL 075-222-0888)で現在、「アートと考古学展 物の声を、土の声を聴け」が開催されている。
京都で今年開催される「考古学のオリンピック」といわれる「世界考古学会議」の関連企画となる同展。展示は考古学の中からアートを考える全4章で構成する。
会場では、第1章「日本人のモノを見る目、感じ方」と題し、物に対する日本独自の価値観を紹介。「石山寺縁起絵巻」には、良弁僧正がこの地に仏閣を建てようと土地を切り開いたところ銅鐸(どうたく)が掘り出された様子が記されており、「この場所が霊験豊かな地であることを確かに示している」と記されている。古い物が付喪神(つくもがみ)になり行列を作る「百鬼夜行絵巻」も展示する。
第2章「考古学の美と魅力の再発見」では、考古学者が研究の中で生み出したものをアートとして捉える試みを紹介。同館所蔵品の中からアーティストがアート作品として価値を見いだした「遺物実測図」を展示する。「考古学復元イメージ画家」の安芸早穂子さんが青森県三内丸山遺跡の資料とデータを元に描いた想像図も時系列で展示する。
第3章「考古学を味わう、見立てる」は、同館で所蔵する考古学資料を参加アーティストが新たな価値を出土品に持たせた展示を行う。平安時代の「青磁花瓶」(平安京左京八条三坊二町跡出土)もアーティストの見立てにより「ヴィーナス誕生」と名付けられた。考古学者による解説とアーティストのキャプションの両方を並べる。
「アートと考古学」作品を集めた最後章「考古学と出会い、響き合う」では、陶芸家の松井利夫さんが発掘作業で廃棄される遺跡の土で制作された陶器や、美術家の伊達伸明さんの取り壊される建物の部材を使ったウクレレなどを展示。仙台で燃料として使われていた「亜炭(あたん)」について当時を知る人の証言収集や、鉱山跡地の調査などを行った「亜炭香古学」プロジェクトで制作した新聞「亜炭香報」も紹介される。
同館学芸員の村野正景さんは「アートと考古学の出会いが生み出した、新しい考古学にまつわる物の楽しみ方や魅力に触れてもらえたら」と来館を呼び掛ける。
期間中、フォーラムや芸術家と考古学者と一緒にアートを作る体験教室、出品者によるギャラリートークなどの関連企画も予定する。
開催時間は10時~19時30分(入場は19時まで)。月曜休館。入館料は一般=500円、大学生=400円、高校生以下無料。9月11日まで。