京都中央卸売市場と京の食文化ミュージアム・あじわい館(京都市中京区)で11月1日、「日本食文化メッセンジャー」体験ツアーが行われた。主催は、近畿農政局と「関西の食文化」実行委員会。
留学生らに日本食の良さを母国に発信してもらうことを目的に開く同イベントは今回で4回目。これまでのテーマは「日本酒」や「梅干し」で工場や蔵の見学を行った。今回はテーマを「Feel UMAMI」に設定。市場の見学に加え、京懐石「美濃吉」料理総支配人の佐竹洋治さんによるだしを使った料理教室も行われた。
大学などを通じ、参加者を募集。希望者はメールで「日本食文化メッセンジャー」に応募、一定の条件を満たせば登録される。メッセンジャーになると同事務局が運営するフェイスブックへの「いいね」や、コメントを残すことで情報発信することが求められる。この日は日本人のほか中国や米国、ドイツやポーランド、バングラディッシュなど8カ国・33人が参加した。
見学前に「卸」「仲卸」業者の役割や、農産物の流通について説明を受けた一行は、京都中央卸売市場へ。フォークリフトや「モートラ」と呼ばれる車両が行き交う中を、同館スタッフの案内を受けながら競り場や場内の店舗を回った。「あじわい館」での料理体験では、30分ほど昆布を火にかけ、山盛りのかつお節を加えて布でこした、できたてのだしを味見した。
海外で料理を披露する機会も多いという佐竹さんは、九条ネギなどの京野菜がフランスやトルコでも好評だが関税がかかって、高級品になってしまうことなども紹介した。メニューの一つ、手まり寿司について「京都で大切にされている一品」と紹介。その上で、「菊の花の形に似ているので9~11月に出される」と料理に季節を織り込むことを説明した。参加者は、慣れない食材に戸惑いながらも協力して料理を完成させた。ポーランド出身の参加者は「難しいところも多かったがとても楽しかった。家でもまた作ってみたい」と笑顔を見せていた。
「京都は大学が集積しており、留学生も多い。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり若い世代に、SNSを使ってそれぞれの母国語で日本の伝統的な食を発信してもらい、日本の食文化のファンを増やしていきたい。参加者のリピーターも増えおり、手ごたえを感じている」と近畿農政局企画調整室長の中山直子さん。