これまで限定販売されてきた早稲田大学、京都大学の共同ブランドビール「ホワイトナイル」が、4月上旬より首都圏および京都の百貨店や大学周辺の酒販店などに販売チャネルを広げた。
「ホワイトナイル」は、古代エジプトで食されていた古代種小麦を材料の一部とするビール。きっかけは早大・吉村作治教授(現・サイバー大学学長)と大手ビールメーカーが取り組んだ古代エジプトのアルコール飲料再現に、京大農学研究科栽培植物起源学研究室が古代エジプトから続く「エンマー小麦」の種子を提供したこと。京大・尾池総長がそれをインターネットで知り、再現されたアルコール飲料を京大会館などで販売できないかと考えたが、結局実現できなかった。
ここで、本件を託された京都大学国際融合創造センターの担当者が着想したのが「地ビール」としての商品化。さらに農学研究科栄養化学研究室の伏木亨教授が「古代種小麦を用いた現代ビール」という商品コンセプトを提案した。商品化に向けて学内組織も結成し、エンマー小麦の大量栽培が整うまで近縁の系統でパスタなどに使われているデュラム小麦を用いることも決定。伏木教授の指導のもと、京都の酒造メーカー・黄桜(京都市伏見区)がノウハウを生かして開発した。
ビールは早大・京大の共同ブランドビールとして2006年4月に両大学の学内および大学近辺のショップ、レストラン、そして東京と京都の黄桜直営店で販売開始。柔らかな味わいに加え、胃にもたれずたくさん飲めるのが特徴で、2006年度の年間売り上げは73,030本を記録した。「古代エジプト文明の知恵が京都の地下水を機に現代に甦ることには文明史的意義がある」と尾池総長。実際に吉村教授も考古学的指導を行った。
商品は瓶入りで、価格は450円(330ミリリットル、参考小売価格)。今回の販売チャネル拡大は、製造量を増やす準備が整ったことなどから。黄桜では注文販売も受け付けている。今年8月からはエンマー小麦を用いた商品の出荷が予定されている。