秋が深まり、紅葉が美しい季節を迎える京都にて、ギャルリーためなが京都では、11月23日(土)から12月15日(日)にかけて「新京都(いまきょうと)」展を開催いたします。「新京都」は、古き良き日本の文化や美術を連綿と受け継いできた京都という場所から、日本の現代の作家の魅力を発信し、千年先まで作品を残していきたいという想いを込めスタートした企画展です。
本展を含めますと京都にゆかりのある作家14名にご参加頂いている「新京都」は今年で3回目を迎えておりますが、京都から発信する現代の美術も少しずつ新たな広がりを見せているように感じています。古都を巡る中での新しい美術との出会いは意外な発見であったり、千年の歴史の流れを経て今に繋がる感性に触れる喜びであったりと、「新京都」ならではの多様な楽しみ方として本展を受け止めて頂ければ幸いです。
架空の人工的な構造物や植物などが混在する空間を組み上げるように描く江上里絵子、箔焼きという技法を用いて変色させた金属箔を組み合わせて制作する日本画の田口涼一、自らが撮影した旅先や風景の写真を元に、そこに映り込んだ見知らぬ人々を油彩で描く田中梢、岩絵具の発色を活かし自然界の動植物をテーマに作品を制作する樋口新、現代において大量に流れては消えていく情報や記憶の断片を、アクリルを用いて絵画として残す山崎愛彦。本展では豊かな表現力を持つアーティスト5名が一堂に会し、約30余点に及ぶ作品をご覧いただけます。
日本画も油画も隔たり無く今の京都を見せていくことが出来る幸せを皆様と分かち合いながら、「新京都」をより一層多くの方達にご高覧賜りたくご案内申し上げます。
江上 里絵子《TWE_O57》91×62cm
田口 涼一《Sound of Silver ー月の繭ー》91×73cm
山崎 愛彦《8da0b6(Big grass)》162×130cm
樋口 新《パンサーと松と牡丹》112×146cm
田中 梢《2020.7.19(桟橋)》130×162cm
出品作家
江上 里絵子 / Rieko EGAMI
1989年奈良県に生まれる。京都市立芸術大学大学院 美術研究科 修士課程 絵画専攻 油画 修了。
モチーフを取り巻く何も無い「空間そのもの」を絵画で表現しようと試みている。架空の人工的な構造物や植物などが混在する空間の、カラ(空)の見えない部分に意識を向け、絵具の盛り上がり、かすれ、染めなどのランダムな筆跡から、空間を組み上げるように描いている。具象画でも抽象画でもない「空間画」という表現になることを目指している。
田口 涼一 / Ryoichi TAGUCHI
1981年大阪市に生まれる。 京都精華大学大学院技術研究科博士後期課程修了 博士号取得。
銀箔を硫黄で硫化させる、古く江戸中期の頃より深秘である「箔焼き」という技法により、銀箔の色を変色させた焼箔を用いて作品を制作する。作家は独学で技法を試行錯誤して身につけ、現在も独自に研究を続けながら、独特な風合いや空気感を作品の中で表現している。
田中 梢 / Kozue TANAKA
1986年大阪府に生まれる。京都造形芸術大学大学院修士課程修了。
旅先や身近な風景など様々な所で撮影した写真を元に、そこに写り込んだ見知らぬ人々の肖像を描く。田中の作品は、ただ美しさを追求するだけでなく、無名の人々がその場に確かに存在していたという記録を残し、自らの記憶とも深く結びつけている。作品には独特な静けさが漂い、どこか懐かしく郷愁に駆られる雰囲気がある。見る者を引き込む田中の風景画は、一瞬の時間をとらえ普遍的な人間の存在を問いかけるものであり、鑑賞者に心の中の思い出や想像の世界を呼び起こさせる。
樋口 新 / Arata HIGUCHI
1988年三重県に生まれる。京都造形芸術大学大学院にて芸術表現を学ぶ。
岩絵具の発色を活かした緻密な点描で自然界の動植物をテーマに独自の世界を展開させている。ラピスラズリ、孔雀石、ターコイズなど色鮮やかな点描は、それぞれの色調が互いに引き立てあうよう巧妙に配置され、画面は画家独特の瑞々しさにあふれる。主題に多く登場するカメレオンは環境によって七色に変化するが、その特徴を人間の複雑な感情の象徴として捉え好んで描いている。樋口は伊藤若沖の生き方や表現方法に多く影響を受けているが、特に輪郭線を描かずモチーフを表現する技法を巨匠に学ぶ。鮮烈な色彩、賑やかなモチーフ、そしてリズミカルな構図など若沖と世界観を分かち合いながら、画家独自の個性あふれる作風を確立している。
山崎 愛彦 / Yoshihiko YAMAZAKI
1994年北海道札幌市に生まれる。北海道教育大学 大学院教育学研究科 教科教育専攻 美術専修にて油彩を学び、現在は京都市立芸術大学美術研究科博士課程在籍中。
自身のSNSアカウントに投稿した写真を素材に、ソフトウェアを使用してコラージュを作成し、それを下図にキャンバスに描き起こしていく。現代社会において、大量に流れやがて消えていく情報が溢れる中、山崎はそれら記憶の断片を再構築し絵画として残していくことで、新たな価値を見出す試みを行っている。個人の記録が容易に残される一方で、数多くの画像が価値を見出されることなく消えていく現実に焦点を当てている。
《 展覧会開催概要 》『新京都(いまきょうと) -古都から千年先へ-』
【会期】11月23日(土) ー 12月15日(日)
【会場】ギャルリーためなが京都
京都市東山区上堀詰町265-7
TEL 075-532-3001
【時間】11:00~19:00 (会期中無休)
【 HP 】www.tamenaga.com