西陣織製品の製造・販売などを手掛け、自社ブランド「AKIHIKO IZUKURA」を運営する「ひなや」(京都市上京区安楽小路町)は、1月にフランス・パリで開催された2010年春夏オートクチュール・コレクションに参加したフランスのオートクチュールメゾン・オノラトゥヴュ社にテキスタイルを提供した。
同社は、絹糸を植物や昆虫など自然由来の染料で手染めし、「自然界の『いのち』を思いやることから生まれる『思いやりの美』」をテキスタイルで具現化しているのが特徴。天然の繊維や染料と受け継いだ技術をルーツに、8世紀にまで遡る織りの手法を使うテキスタイルメーカーとして、近年では海外のデザイナーやクリエーターとの技術コンサルティングやコラボレーションなどに精力的に取り組んでいる。
同社のテキスタイルに注目したパリ在住の日本人ファッションジャーナリストがオノラトゥヴュ社に打診したところ、「ぜひ新作コレクションに使ってみたい」という返答があり、今回の提供が実現した。同社の伊豆蔵直人社長は「我々の染織の技術や精神が、日本文化の枠を超えて広く海外でも評価と認知をいただけるきっかけになればうれしい」と話す。
ショーでは、同社製の組織(くみおり)技法を駆使した生地を全面に用いたロングジャケット、帯地をあしらったスカートやパンタロンなど4作品が登場した。今回のコラボレーションを機に、新たに2つのオートクチュールメゾンからコラボレーションの打診があるなど、高い評価を受けたという。「パリのオートクチュールメゾンとも交流によって、京都で培われた染織の伝統に新たな前進をもたらしていきたい」と伊豆蔵社長。
同社は今回のショーに先駆け、フランスで行われるファッション展示会「プルミエール・クラス」へ参加し、ヨーロッパ市場への本格参入に挑んだ。さらに、すでに延べ60の取引先を持つアメリカでの展示会参加も決まっている。伊豆蔵社長は「海外市場に向けての果敢な挑戦を今後も続けていきたい」と意気込みをみせる。