多目的スぺースの「ソーシャルキッチン」(京都市上京区相国寺門前町)で3月18日、田中美帆さんの個展「おどりが方向を変える時」が始まった。
田中さんは京都市立芸術大学大学院修士課程を卒業し、在学中から植物など他者を世話することが自分の助けにもなる「ケア」の分野に関心を持ち、今年4月から専門学校でケアを学ぶことを決めたという。
「自分が一生やりたい仕事だが、医療の世界は忙しくのんびり考えたり気になることに立ち止まったりできないのではという怖さがある。今まで美術をやってきたことがよかったのだと確認し、未来の私が今の私に立ち戻るときの『待ち合わせ場所』作りたくて展覧会を開くと決めた」と田中さん。タイトルは、医療の道に進むことが、それまでの自分を捨てることではなく、飼っている文鳥の「おどり」が少し進んでからなめらかに方向を変えることに似ていると感じたことに由来する。
展示では156点を物の性質によってゾーニングした。来場者は田中さん自身が吹き込んだ音声キャプションを聞きながら地図を持ってめぐる。机には心を静めたり、ご機嫌な日に描いたりした絵を日ごとに整理し、台に置いた家のキッチンにあるレシピやメモ、掃除に使った歯ブラシなど家と切り離せないものを写真に写してまとめた。収納に片付けるであろう物は棚の上、重たい昔の絵のファイルは床に直接置き、これから継続して考え続ける「宿題」になるメモや絵、思い出の品は間隔を取って展示する。ボイスメモや「今のわたしと未来のわたしの待ち合わせ場所」を作る試みとして作った写真のパネルは壁に掛ける。
田中さんは「私のこれまでしてきたことの確認や準備、未来と今の私への伝言が詰まった展示。誰かに少しでも立ち会ってもらえたら」と話す。
開催時間は、平日=13時~19時、土曜・日曜・祝日=11時~19時。3月28日まで。