株式会社GK京都(本社:京都府京都市、代表取締役社長:麻田風児)は、開発チームの一員として、南海トラフ地震・津波からの防災・減災を見据えた、避難訓練の行動を可視化するWebアプリ、津波避難戦略検討支援システム「逃げトレView」および、そのデータを活用したサービスの提供を2026年4月1日より開始いたします。本システムは、京都大学(矢守克也研究室)・九州大学(杉山高志研究室)・有限会社アールツー・メディアソリューションらと共に開発を進めてきたものです。また、今回の提供開始に伴い、逃げトレサービスを社会実装するためのNPO法人「逃げトレ」設立に向け、認証申請中です。

1. プロジェクトの背景
近年、南海トラフ地震の発生リスクが高まる中、2024年8月8日に発生した日向灘沖の地震では、巨大地震の可能性の相対的な高まりを示す「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されました。そのと
き多くの人々が、事前避難の要不要や海辺の施設の営業の可否について判断に迷う状況が生じました。こうした中で「逃げトレView」は、人々の避難訓練のふるまいに基づき、より実用性のある判断材料を提供できるシステムとして活用できるよう開発を続けてきました。
2. Webアプリ「逃げトレView」とは
「逃げトレView」は、スマートフォン用アプリ「逃げトレ」を使った個別津波避難訓練のログデータを集積・可視化し、分析するためのWebアプリケーションです。防災に関わる自治体職員などを対象に、集積されたデータをマップや各種チャートで確認することで、訓練をおこなった個人のみならず、団体・組織、地域全体にとっての津波避難戦略をより実用的に検討できるように支援します。
3. シチズンサイエンスで実現する津波避難対策
「逃げトレView」のデータは、スマートフォンアプリ「逃げトレ」を通じて取得されます。本アプリは、GPS情報と津波の浸水想定をもとに、誰もがいつでもリアルな津波避難訓練を行える仕組みです。地域住民など個人が繰り返し訓練を行うことで、避難行動を見直し、改善できると同時に、「逃げトレView」によって個々人の訓練データが蓄積されることで、行政や地域は避難行動の様子を把握し、地域全体の避難戦略の検討精度を高めることが可能になります。
このように、「逃げトレ」と「逃げトレView」は一体となり、住民が主体的に参加し、その行動データが社会課題に活用されるという「シチズンサイエンス」の考え方に基づいた仕組みとして機能しています。

4. 逃げトレViewの特徴とできること
エリア分析:
避難訓練の成否などのデータを、避難開始/終了地点をもとに地図上に可視化し、分布と傾向の分析や、エリアごとの平均を算出することで、避難成否確率の高・低などを把握し、重点的な対策・検討につなげられます。

分析ダッシュボード機能の画面イメージ(地形は高知県黒潮町のものですが、訓練ログデータはイメージです。実際の内容と異なる場合があります。)
ルート分析:
避難実施時の挙動をタイムラプスで再現する機能では、複数のデータを重ねて表示できます。これにより、頻繁に利用されている避難ルートや避難時の人流を視覚的に把握し、津波の到達状況とあわせた分析が可能です。どのルートがより安全であったかを検証することも可能です。

津波避難行動タイムラプスの画面イメージ(地形及び浸水想定は高知県黒潮町のものですが、訓練ログデータはイメージです。実際の内容と異なる場合があります。)
シミュレーション機能:
避難訓練で得られたログデータをもとに、条件を変更して再分析できるシミュレーション機能があります。たとえば「避難開始までさらに時間がかかった場合」や「津波の規模がより大きかった場合」など、異なる条件下での避難状況を検証することが可能です。
特許取得の技術:
本システムでは、「逃げトレ」による独自のデータ取得手法と「逃げトレView」によるその分析において2つの特許を取得済みです。
特許第7513974号 (2024年7月2日)
特許第7577268号 (2024年10月25日)
実際の避難訓練ログデータを用いた分析としては、唯一のシステムおよびサービスです。
5. 実績と効果
宮崎県宮崎市青島地区では、「逃げトレ」および「逃げトレView」β版を防災学習に活用する取り組みが高校生を中心に行われています。また、2024年8月8日16時42分、日向灘の地震(Mw7.0)が発生した際には、同地区において実際に「逃げトレ」を使った避難訓練が偶然おこなわれていました。津波リスクを想定した状況下でも、「逃げトレ」および「逃げトレView」β版で学んだことをもとに、参加生徒たちによる率先避難がおこなわれ、日常的な訓練の成果が実証されました。

日向灘の地震の発災直前におこなった訓練の様子(左上・左下の写真)と、日向灘の地震の発災直後に率先避難をおこなった様子(中央・右の写真)
6. NPO法人化と今後の展望
今後は、津波被害が予測されるエリアの自治体を中心に導入支援を積極的に推進してまいります。あわせて、防災教育での現場での活用や、民間企業への展開も視野に入れ、利用機会の拡大を図ります。サービスや価格の詳細については、Webサイト「みんなで逃げトレらぼ」よりお問い合わせください。
みんなで逃げトレらぼ:https://nigetore.jp/
これらのサービス提供と社会実装を継続的に推進する基盤としてNPO法人「逃げトレ」を設立するため、2026年2月6日に創立総会を行い、認証申請中です。本法人は、科学的知見に基づいた実効性のある津波避難行動への意識と理解の普及、および避難環境整備のための有効な情報プラットフォームを目指し、“津波から逃げきる力”を持った災害に強いひとづくりと防災文化の醸成に貢献してまいります。
<ご参考>スマートフォンアプリ「逃げトレ」について
「逃げトレ」は、南海トラフ地震による津波を想定したリアルな避難訓練を、誰もがいつでも手軽に行えるスマートフォンアプリです。リアルタイムにユーザーの位置情報をGPSで取得し、その避難行動を津波の浸水シミュレーションと共にマップ上で可視化することで、避難の成否や危険度を確認でき、また、条件を変えながら繰り返し訓練することで、避難のレベルをより向上させることができます。2018年度には、避難訓練への情報技術の活用が高く評価され、グッドデザイン金賞を受賞しました。
株式会社GK京都
ともに考え、ともに未来をつくる「羅針盤型デザインファーム」
GK京都は広義においてのデザインの力で、クライアントや社会の課題に対して羅針盤となれるデザインファームを目指しています。
構想段階では、思考過程や発想を可視化しながらクライアントと共に考えを深め、共感を呼ぶ未来をイマジネーション豊かに描くことで、目指すものを明確化し、実現に向けてのエネルギーを引き出します。
実装段階では、デザインの多岐にわたる専門性と様々な業界経験、そして、それらエッセンスの自在な組み合わせによるデザインマネジメント力を駆使。複合的なデザイン解を、シンプルで調和のとれた力強いものに着地させます。1972年設立。URL: https://www.gk-kyoto.com
●防災デザインへの取り組み
GK京都は、阪神・淡路大震災の翌年の1996年より、京都大学防災研究所と共同で防災のためのデザイン研究をスタートしました。これまで、多角的な知見から同時にアプローチすることで、防災ピクトグラム(図記号)、津波避難サイン(標識)、ハザードマップ、避難訓練の企画や広報などにおいて、様々な成果を生み出してきました。GK京都は、これからも防災・減災に役立つさまざまな取り組みを総合的にサポートしていきます。