河村能楽堂(京都市上京区)で3月10日、能舞台で着物を学ぶ講座が開かれた。主催は、普段着の着物を提案し、オリジナルとリサイクル着物の販売を行う「彼方此方屋(おちこちや)」(下京区)。
冒頭、主催のたなかきょうこさんから、「洋服の時と同じように歩いていると裾が乱れてくるという人も多いはず。今日は能の動きから着物の時の歩き方を学んでもらえたら」とあいさつした。
河村純子さんが、能の入門編として舞台の作りや面の使い方を紹介。実際に参加者は、祝言の謡(うたい)として知られる「高砂」をうたった。「能は、舞台装置がなくてもイマジネーションにより、あの世へ行ってしまった人、600年も前の人に出会うことができる」とその魅力を語った。
その後、参加者は能舞台に立ち、河村浩太郎さんから能の足運びを学んだ。腰を落とし、なるべく地面近くの高さで足を進め、降ろす時につま先を上げるよう指導。「バレエやフィギュアスケートのように高く飛んで美しく見せるのに対して、アジアの舞踊は共通して、地面を意識した姿勢を取る。能も、腰を落としすり足で進んでいる」と純子さん。前進しながら右手を目の高さまで掲げる、「差し込み開き」という形を練習した。
仕舞「八島」を例に、扇子が刀や盾、朝日が昇る様子を、動きを分解しながら解説。最後に、「唐織(からおり)」「長絹(ちょうけん)」といった能の装束を希望者に着せて理解を深めた。着物に親しんだ参加者からは「装束はどれくらい保つのか」などの質問も寄せられ、「面とは違ってひもをくくる位置から痛んでくるので長くても100年程度」と河村さんは説明した。
「着物を着て舞台の上に立てたのが良かった」と話す人も多く、早速次回公演を予約する参加者の姿も。「衣装を着せてもらえたのはうれしかった。難しいと思っていた能も、次からは違う見方ができそう」と参加者の一人、堂下まみ子さんは話していた。